勉強で身に付ける力
2020.10.08
中学校で習う教科の知識には、ほとんど役に立たないものもたくさんあります。私は学校と塾の教室以外の場所で「中点連結定理」を使ったことは人生で一度もありませんし、ユリが単子葉類でサクラが双子葉類だと知っていて得をしたこともありません。しかし、中学校で習う教科を通して身に付ける「力」は、どんな人にも必ず役に立つものです。

国語(現代文)で身に付けるべき力は「説明」です。説明を読んで理解できること、説明を聞いて不明な点を質問できること、口で説明できること、書面で説明できること、これらがある程度できるようになれば、国語の勉強はしっかり力になっています。中学校の古文は位置付けが難しく、ひとまずは、言葉にも考え方にも「成り立ち」とか「積み重ね」があるということを、なんとなくでも意識できればよしとして構わないでしょう。蛇足ですが、小学校でプログラミングを教えるくらいなら、国語の時間を増やしてコンピュータを使った文章入力(タイピング)を教えるべきだと思います。

数学で身に付けるべき力は「筋道」です。「こうならばこう」「こうしたいならこうでなければならない」「こうなったということはこうだったといってよい」「こうであればこうはならない」といった考え方がある程度できるようになれば、数学の勉強はいくらか力になっています。なにか問題を解決したいとき、なぜ上手くいかないか、どうなっていれば上手くいくか、そのためになにができるか、なにから試すのが効果的か、出てきた結果はどれだけ十分か、と順序良く考える意識が出てくれば、数学の勉強はしっかり力になっています。

英語で身に付けるべき力は「やりくり」です。世の中には自分と違う文化や習慣をもつ人たちがいて、思いもよらない行動や考え方があり、通じるところもあれば通じないところもある、ということがある程度理解できれば、英語の勉強は半分くらい力になっています。相手にとっては自分も「違う文化や習慣をもつ人」で、同じ言葉を使う人の間にも微妙な差はあり、お互いに工夫しないと上手くいかないことが、なんとなくでも感じられるようになれば、英語の勉強はしっかり力になっています。

社会で身に付けるべき力は「つながり」です。理科も中学範囲では社会を理解するための道具として考えるべきです。たとえば北海道は酪農がさかんです。酪農がさかんなのは広くて平らで適度に寒くて交通機関が発達しているからです。寒いのは緯度が高い(北にある)からですが、同じような緯度にあるイタリアや南フランスより寒いのは、シベリアから吹く風のせいです。寒くないと商品価値が高い米が主流になることが多く、寒すぎると牧草が育ちにくくなります。シベリアから風が吹くのは空気の重さが温度で変わるためで、地表近くでは寒いところから暖かいところに空気が流れ込みます。シベリアが寒いのは、結局は地球が丸いからです。こういったつながりを意識することがある程度できるようになれば、理科と社会の勉強はしっかり力になっています。

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