数学の問題集(中高)
2020.10.29
実際問題として、数学は「学校でもらう教材」を全部やり終える生徒自体そう多くないので、追加の教材は必要ないこともありますが、とくに希望がある生徒におすすめしているものを紹介します。

中学数学の総復習(ISBN 978-4-7743-1746-5)

それなりの分量、無難な問題、1冊で3年分網羅と、扱いやすくまとまっています。田舎は高校受験のプレッシャーが極端に小さい分、学力面の遅れが放置されがちな傾向もあるので、全国並でいうところの「基礎レベル」には追い付いておこう、という目的でこの本を活用するのもよい考えです。中学教材の悪癖で、左側のページで「やれと言われたこと」を何の考えもなしになぞるだけで解けてしまう問題もありますが、全体的には安易さを避ける配慮がされていると思います。

ハイクラステスト数学(ISBN 978-4-424-30523-1)、2年生用はISBN 978-4-424-63512-3、1年生用はISBN 978-4-424-63511-6。

いわゆる「難しめ」の中学数学の問題としてはこれが無難かなと思っています。なかには「酷い問題」や「無茶な問題」も含まれていますが、普通に機能している試験というのは満点を目指して解くようなものではないという、入学試験に限らず試験全般の基本中の基本となる心得を身に付けるうえで、いい機会になります。写真は3年生用ですが、1~2年生用のものは計算問題の分量がけっこうあり、算数の考え方から数学の考え方への切り替えに有用です。

左から、数学エクスプレス(ISBN 978-4-86346-719-4)、文系数学の良問プラチカ(ISBN 978-4-7772-1487-7)
 
「エクスプレス」は名前の通り、高校数学のI・II・A・Bを「ざっと流す」のに手ごろな問題集です。写真ではわかりにくいですが、本のサイズも小さく厚さもそれほどでなく、初版が2019年と内容的に新しく、言うことがありません。あれこれと脇目を振るより、まずはこのくらいの問題をしっかり解けるようにするのが近道です。文系で受験に数学が必要な生徒はもちろん、理系の生徒が数IIIを勉強する前の「いったんまとめ」としても使えます。「プラチカ」はタイトルが「文系数学」とはなっていますが、問題も難しめで「論述」に力点を置いており、理系の生徒にも十分役立ちます。たとえマーク式の試験しか受けない生徒であっても、効率よく得点を稼ごうと思うなら、論述力を鍛えるのが最短の近道です。余談ですが、この本のタイトルを何と読むのか、私はいまだにわかりません。ずっと「ぷらちか」だと思っていました。

左から、解き方がわかる数学III・C(ISBN 978-4-86346-032-4)、数学IIIの完全マスター(ISBN 978-4-578-24064-8)
 
どちらもタイトルに偽りなく、教科書で身に付けた知識を問題を解く力に変え、入試レベルの問題をみっちり練習する手助けになります。「完全マスター」の最初のページに「教科書を終えた段階からの入試問題対策に最適です」とありますが、実際には、先に「解き方がわかる数学」でざっと復習しつつ「問題を解く準備」をしておいた方がよいでしょう。しかしそうすると時間の問題が出てきます。数IIIを最後まで勉強して、これらの本で復習し問題に慣れて、それから受験校別の対策をやるには、他にも勉強しなければならない科目があることを考えれば、高校2年の春休み(3年生になる直前)までに教科書が終わっていなくては間に合いません。いわゆる進学校の一部では実際にそのようなスケジュールで勉強しますが、そうでない場合、ある程度自分で作戦を立てる必要があります。
2020.10.29 12:04 | 固定リンク | 教材の紹介
放送大学の授業と印刷教材
2020.10.28
BSの231ch、232ch、531chで放送されている放送大学の授業は、受講生でなくても視聴できる画期的な番組です。しかも、授業用の印刷教材(教科書)まで市販されていて、書店や大手通販サイトのほか、出版元への直接注文もできます。

もちろん、専門性の高い科目には相応の勉強をしていないと分からないものもありますが、受講対象の幅広さが売りの放送大学ですから、高校生~高校卒業程度の学力で十分理解できる番組も多数あります。とくにおすすめなのが「初歩からの」シリーズの理系科目で、数学・化学・生物学・物理など「高等学校までに学ぶ内容を一から学び直す」ための授業ですが、高校範囲を丸ごとやり直してくれるということは、今現在授業がわからなくなっている高校生の復習にもうってつけです。

文系科目では井口 篤 先生とヴァーナム アットキン 先生の英語の授業が素晴らしく、とくに地域による発音の違いを「本当に現地を訪問しながら」追いかける番組などは、放送大学以外では実現できなかったに違いない貴重なものです。余計なお世話ではありますが、本当によくそんな企画が通ったものだと思います。社会学方面の授業には当たり外れがあるようにも感じられますが、高橋 和夫 先生や飯尾 潤 先生の政治学講座は初学者にもわかりやすく、大人向けの教養番組としてはもちろん、高校生が社会に関心を持つきっかけとしても有用です。雰囲気がつかめてきたら、奈良岡 聰智 先生の近代史などに挑戦してみてもよいでしょう。

少し進んだ理系の科目にも、面白い講座がたくさんあります。まとまった内容で親切丁寧な数学の「入門」シリーズは、ありがちな「とにかく問題をじゃんじゃん解かせる」授業ではなく、仕組みのところをじっくり勉強できます。量子の世界に踏み込みつつ物理系の科目ほど強面でない量子化学は、数学の知識がある程度必要ではあるものの、理系科目の勉強を本格的に始める第一歩としてとっつきやすさがあります。宇宙地球科学分野の入門講座は名前が統一されていないようですが、必要な前提知識を極力減らす構成で、気軽に楽しめます。

BS放送を受信できる環境さえあれば、印刷教材がなくても大筋は追いかけられる授業がほとんどなので、ぜひ視聴してみてください。

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-参考外部リンク-
番組表@放送大学
放送大学教育振興会オンラインショップ@放送大学教育振興会
放送大学叢書@放送大学
2020.10.28 19:58 | 固定リンク | 雑談
高校文系科目の入門教材
2020.10.21
やさしく語る現代文(ISBN 978-4-89680-423-2)

まなびやでも現代文の入門として第一候補にしている参考書です。大学受験用ということにはなっていますが、できるなら高校入学が決まった春休みか、いわゆる難関私立を受験する生徒であれば中3前の春休みにでも、やっておいた方がよい内容です。現代文が「何をするべき科目なのか」しっかり知っておけば、学校の授業を受ける効率が飛躍的に高まります。

この本について「前半の講義部分はわかったけれど後半の問題演習が難しすぎる」という評判を目にすることがありますが、そう感じるのは「前半の内容が身に付いていない」証拠です。勉強に限ったことではありませんが「基礎はわかっているけど問題が解けない」という生徒は基礎が身に付いていない、というのは例外のない法則です。

やさしく語る小論文(ISBN 978-4-89680-340-2)

同じ著者による作文と小論文の参考書で、ごくごく初歩的なところから始めることができます。正直なところ「大学の一般選抜で出題される小論文」を書くには不足のある内容ですが、たとえば指定校推薦で試験直前まで作文対策の時間を取れなかったとか、いわゆるスポーツ推薦で作文も書かなければならなくなったとか、そういう場合の「特効薬」として有用です。

英文読解入門 改訂版(ISBN 978-4-89680-837-7)

英文法と語法の入門として第一候補にしている参考書です。高校生が学校や試験で目にする英文を読み解くのに必要十分な知識を身に付けるという意味では申し分ない内容で、学校の授業を受ける効率も段違いの向上を望めますが、まなびやで最初からこの本をおすすめすることはめったにありません。というのは、ほとんどの生徒は「英語がわかっていない」という事実に気付いていないからです。

理想的な手順としては、まず数学を少しやって「勉強はやり方で効率が変わる」という初歩のところをしっかり納得してもらい、つぎに現代文をやって「わかっていなかった」という気付きを経験して、そのうえで英語に取り掛かるのがスムーズです。

ポレポレ英文読解(ISBN 978-4-89680-338-9)

同じ著者による長文読解のための参考書です。これも「いきなり難しくなる」という評判があるようですが、本の中でとくに「難しい」と印がついている英文以外は、基礎をしっかり勉強していればちゃんと読めます。ただ「初学者向け」でないのも確かで、文法と語法を上で紹介した本の水準くらいまで勉強してからでないと、辛いだけで身に付くものがない勉強になってしまうでしょう。

いちばんやさしい古典文法の本(ISBN 978-4-902381-09-2)

古文の参考書なのですが、まなびやでは、受験科目に古文がある生徒向けというより、そうでない生徒が古文にかける時間を節約するための本として紹介しています。この本の内容を「ただ覚えるだけ」で、高校を卒業するまで古文で困ることはありません。基礎がどうの力の付け方がこうのと面倒な話は一切なく、本当にただ覚えればそれで済むので、中1~高2の間いつでも使える本です。もちろん、高3になって志望を変え急に古文が必要になった場合などにも、大きな助けになります。

日本史講義(ISBN 978-4-7961-2020-3)

普段の授業では使っていない本ですが、内容が素晴らしいので紹介しておきます。歴史がどういうつながりを持って展開してきたかをきちんと扱った、たいへん貴重な参考書です。日本史が受験科目になる生徒には、ぜひ本格的な勉強に取り掛かる前に読んで欲しい本ですが、大学生や社会人の教養書としても有用です。年表などの網羅的な情報は乏しいので、高校の教科書や資料集などを隣に用意しておくのがよいでしょう。
2020.10.21 21:08 | 固定リンク | 教材の紹介
勉強で身に付ける力
2020.10.08
中学校で習う教科の知識には、ほとんど役に立たないものもたくさんあります。私は学校と塾の教室以外の場所で「中点連結定理」を使ったことは人生で一度もありませんし、ユリが単子葉類でサクラが双子葉類だと知っていて得をしたこともありません。しかし、中学校で習う教科を通して身に付ける「力」は、どんな人にも必ず役に立つものです。

国語(現代文)で身に付けるべき力は「説明」です。説明を読んで理解できること、説明を聞いて不明な点を質問できること、口で説明できること、書面で説明できること、これらがある程度できるようになれば、国語の勉強はしっかり力になっています。中学校の古文は位置付けが難しく、ひとまずは、言葉にも考え方にも「成り立ち」とか「積み重ね」があるということを、なんとなくでも意識できればよしとして構わないでしょう。蛇足ですが、小学校でプログラミングを教えるくらいなら、国語の時間を増やしてコンピュータを使った文章入力(タイピング)を教えるべきだと思います。

数学で身に付けるべき力は「筋道」です。「こうならばこう」「こうしたいならこうでなければならない」「こうなったということはこうだったといってよい」「こうであればこうはならない」といった考え方がある程度できるようになれば、数学の勉強はいくらか力になっています。なにか問題を解決したいとき、なぜ上手くいかないか、どうなっていれば上手くいくか、そのためになにができるか、なにから試すのが効果的か、出てきた結果はどれだけ十分か、と順序良く考える意識が出てくれば、数学の勉強はしっかり力になっています。

英語で身に付けるべき力は「やりくり」です。世の中には自分と違う文化や習慣をもつ人たちがいて、思いもよらない行動や考え方があり、通じるところもあれば通じないところもある、ということがある程度理解できれば、英語の勉強は半分くらい力になっています。相手にとっては自分も「違う文化や習慣をもつ人」で、同じ言葉を使う人の間にも微妙な差はあり、お互いに工夫しないと上手くいかないことが、なんとなくでも感じられるようになれば、英語の勉強はしっかり力になっています。

社会で身に付けるべき力は「つながり」です。理科も中学範囲では社会を理解するための道具として考えるべきです。たとえば北海道は酪農がさかんです。酪農がさかんなのは広くて平らで適度に寒くて交通機関が発達しているからです。寒いのは緯度が高い(北にある)からですが、同じような緯度にあるイタリアや南フランスより寒いのは、シベリアから吹く風のせいです。寒くないと商品価値が高い米が主流になることが多く、寒すぎると牧草が育ちにくくなります。シベリアから風が吹くのは空気の重さが温度で変わるためで、地表近くでは寒いところから暖かいところに空気が流れ込みます。シベリアが寒いのは、結局は地球が丸いからです。こういったつながりを意識することがある程度できるようになれば、理科と社会の勉強はしっかり力になっています。

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