宮沢賢治の童話と詩集
2020.11.09
左から、新編 風の又三郎(ISBN 4-10-109204-4)(現行本はISBN 978-4101092041)、新編 銀河鉄道の夜(ISBN 978-4-10-109205-8)、注文の多い料理店(ISBN 978-4-10-109206-5)、ポラーノの広場(ISBN 4-10-109208-7)(現行本はISBN 978-4101092089)
 
宮沢賢治というのは不思議な人で、彼の童話はさらに奇妙です。好き嫌いは分かれますが、これを「嫌い」と知るだけでも、手に取った価値のある本です。

時代時代で、文学作品の価値とは無関係なところから、持ち上げられたり貶められたりといったことがあったとしても、宮沢賢治は(難しそうな言葉を使うことはあっても)難しいことをしないし書かない、という信頼さえ持つことができれば、彼の童話に強面なところはありません。

左から、宮沢賢治詩集(谷川編)(ISBN不明、現行本はISBN 978-4003107614)、宮沢賢治詩集(草野編)(ISBN不明、現行本はISBN 978-4101092034)

どちらも古本で買ったもので、岩波のもの(左)は「昭和二十五年十二月十五日 第一刷発行」、新潮のもの(右)は「昭和四十四年四月十日 発行」とあります。現行本がどうなっているのかわかりませんが、手元の岩波版は、仮名遣いや字体を勝手に変更しない編集で、安心して読めます。

-蛇足-
これは私の勝手な推測なのですが、宮沢賢治には「外国語を日本語で」読んでいたのではないかと思わせるところがあります。たとえば、
Dorothy lived in the midst of the great Kansas prairies, with Uncle Henry, who was a farmer, and Aunt Em, who was the farmer's wife.
The Wonderful Wizard of oz (L. Frank Baum) 第一章冒頭より

という英語があったとしましょう。普通はこれを

  1. Dorothy lived (in the midst (of the great Kansas prairies)), (with [Uncle Henry, (who was a farmer), and Aunt Em, (who was the farmer's wife)]).

  2. Dorothyは(the midst < the (great) Kansas prairiesに)([Uncle Henry <= a farmerとAunt Em <= the farmer's wife]とくっついて)生活していた。

  3. Dorothyは、大きなKansas平原の真ん中に、農夫のHenryおじさんと、その農夫の妻のEmおばさんと一緒に、住んでいた。

  4. ドロシーは、農夫のヘンリーおじさんと夫婦のエムおばさんと一緒に、おおきなカンザス平原の真ん中に住んでいた。

のように整理して読み、日本語に訳せと言われたのでない限り3番のところまでで解釈してしまいます。英語を読むことに慣れている人は2番くらいまで、毎日たくさんの英文を読んでいる人ならたいてい1番のままで読んでしまいます。

しかし宮沢賢治は「4番のところまで進めてから」読んでいたのではないか、というのが「外国語を日本語で」の意味です。根拠があってそう考えているわけではありませんが、彼が書いたものの調子だとか、いわゆる標準語を「外国語のようだ」と言っていたことなどから、どうもそういう気がしてなりません。

-関連記事-
図書貸出のお知らせ
2020.11.09 22:30 | 固定リンク | 本の紹介

- CafeLog -