英文法の本
2020.12.13
英文法の「なぜ」(ISBN 978-4-469-24623-0)

これは「文法を覚えさせる」ための本ではなく、どうしてそういう仕組みになったのかを、歴史を紹介しながら解説してくれる、なかなか画期的な本です。書いてある内容は平易で、しっかり勉強していれば高校入学前の春休みくらいに読んでも理解できる生徒はいるだろうと思います。

言葉を勉強するということは、歴史や習慣や感じ方や考え方を勉強するということ、まとめていえば文化を勉強するということであって、それらを無視して機械的な反復練習だけに頼るのは、無駄に遠回りな道になります。とすると英語の成り立ちについての説明は英語教育の中で普通に行われているはずですが、この本が画期的なのは、現代英語を勉強する上で頭を悩ませるだろう問題をずらりと解説しているところです。また従来、大学で教わる英語の歴史は、たいてい「英語の歴史を理解するための」ものであって、中高生のとき悩んだであろう疑問を解決するためのものでないのが普通でした。

ただこの本が大学受験の英語に役立つかというと、話がスッキリした状態で勉強を進められるメリットはあるものの、直接的なご利益はそう多く期待できないかもしれません。そういう意味では、受験が終わった春休みのちょっと空いた時間に読むとか、英語を勉強し直したい大人が手始めに読んでみる、といった使い方の方が適しているかもしれません。文学部に入学する生徒でなくても、自分が勉強したことの後ろにどういう歴史の繋がりがあったのか、その手ががりにだけでも触れておくのは決して損になりません。読み物としても十分に楽しめる本です。

考える英文法(ISBN 978-4-480-09910-5)

今度は正真正銘「英文法の勉強の本」です。1966年に出版された本の復刻版で、冒頭「はしがき」によると対象読者は「高等学校二三年生以上」となっており、ようするに高校の英文法を一通り学んだ後に知識を整理するための本です。

たしかにこの本はあらゆるところが古く、次から次と波のように押し寄せる教え方も古ければ、擬似関係詞だの代不定詞だのヨクワカラナイ用語が出でもきますし、出版から50年以上経ち英語が変化してしまった部分もあります。しかしそれでも、例文を厳選し、丁寧かつ簡潔に説明しながら、実際の試験問題まで盛り込んで、これだけの範囲をカバーしてあることには、一定の意義があります。少なくとも、ただ解いては答え合わせを繰り返すタイプの「文法ワーク」よりも、はるかに効果的でしょう。これも、以前紹介した単語帳のDUO selectと同様「どうせやるならこれがいいんじゃないか」というものです。

なお、この本はまなびやの分類では「教材」扱いでないため、貸出の対象になります。あくまで「読む」ための貸出なので、問題集として本格的に「解きたい」人は自分で購入してください。

<英文法>を考える(ISBN 978-4-480-08230-5)

タイトルに「英文法」とありますが、これはある種の「レトリック」で、1999年出版当時の「最近の言語学」が諸問題をどう扱っているかについて、英語を例に取りながら紹介する本です。そのため、高校生が英語の試験勉強のためにこの本を読んでも、ほとんど効果は期待できません。そういうわけで、万人にお薦めする本ではありませんが、文学部に進んだ大学生なら、言語学を学ぶ機会が乏しい専攻であればなおさら、手に取ってみる価値はあるでしょう。

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2020.12.13 19:11 | 固定リンク | 本の紹介

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