文章読本
2021.05.01
左から、文章読本(谷崎)(ISBN 4-12-200170-6)、文章読本(三島)(ISBN 978-4-12-206860-5)、文章読本(丸谷)(ISBN 4-12-202466-8)
同じタイトルで著者が異なる本が3冊並んでいますが、このほかにも「文章読本」(ぶんしょうとくほん)と称するものは多数あります。中身はそれぞれ異なり、名前だけでわかるのは「文章について書かれた本」だということだけです。
実物を手に取ってみればわかる話をくどくど引っ張っても仕方ないので、ごく大雑把に言ってしまえば、文章読本というのは「(日本語の)文章はこう読んでこう書くのがよいだろう」というコツや心得や練習法をまとめた本です。3冊とも著名な小説家が書いたもので、文学的な文章を中心に取り上げていますが、文学的でない実用の文章も無視してはいませんし、ある程度は文学的な文章に親しんでいないと実用文章も結局のところ上手には書けません。
この手の本を初めて読む人が親しみやすそうなのは谷崎の文章読本で、解説書というよりは概説書、日本語が持つ特徴や歴史などを紹介しつつ、文章に対する興味と関心を喚起する内容です。手強いのは丸谷の文章読本で、英語や漢文の引用も多く、ページ数も谷崎の本の倍以上あります。高校生に読めないほど難解な本ではありませんが、受験が終わってからゆっくり読んだ方がよいだろうと思います。三島の文章読本は、少し意外ですが、現代の大人が教養書として読むには、3冊の中でいちばん「当たりが軽そう」な内容です。読み物として面白く、教科書で勉強しているような気分にさせないのが長所です。
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