ナルニア国物語
2021.07.28
左から、ライオンと魔女(ISBN 4-00-114034-9)、カスピアン王子のつのぶえ(ISBN 4-00-114035-7)、朝びらき丸東の海へ(ISBN 4-00-114036-5)、銀のいす(ISBN 4-00-114037-3)、馬と少年(ISBN 4-00-114038-1)、魔術師のおい(ISBN 4-00-114039-X)、さいごの戦い(ISBN 4-00-114040-3)

写真の7冊で「ナルニア国物語」のひとシリーズになっています。

イギリス児童文学の代表作のひとつで、出版社のレーティングで「小学4・5年以上」となっていることからもわかるように、そんなに難しい文章ではありません。著者のルイスはトールキンの友人で、このシリーズもいわゆる「ハイ・ファンタジー」というジャンルに分類されます。指輪物語よりはずっと読みやすく、ホビットの冒険とどっこいくらいでしょう。余談ながら、このシリーズは当初、トールキンに酷評されたそうです。

この本で特徴的なのは、著者が熱心なクリスチャンであったことでしょう。細かいことを言えば、アイルランド国教会から無神論を経てイギリス国教会といった変遷があったりもしますが、重要なのはそこではなく、熱心なクリスチャンが、しかし宗教的な教訓(allegory)とは別物として描いた物語だという点です。そういう経緯があるからこそかえって、彼らが「理屈よりも内側」に持っている感覚が、より素直な形で表現されています。もちろん、ひとことでクリスチャンとはいっても、地域や宗派によって考えや価値観が異なりますが、その一例を体験する材料として、大人が読んでも十分価値がある本でしょう。

自分の国の中だけに引き篭もって暮らすことができない時代、カタカナ語でいえばグローバリゼーションの時代がやってきて、いろいろな文化を持つ人たちと付き合う必要性がどんどん増しています。キリスト教やイスラムについて知る機会の重要性が高まっているのも間違いないでしょう。それに加えて、いつも通りの私の持論ではありますが、やはり私たち自身について知るために、こういった異文化に触れることが重要な助けになります。「井の中の蛙大海を知らず」というのは実際その通りなのでしょうが、もっと大きな問題は「井の中の蛙井を知らず」であって、外から見る視点がなくては内もわからない、ということだと思います。私たち自身にも「理屈よりも内側」に持っている感覚というのは必ずあるのです。

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2021.07.28 16:31 | 固定リンク | 本の紹介

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