私の幸福論
2021.10.22
私の幸福論(ISBN 978-4-480-03416-8)
著者の福田恆存はシェイクスピアの翻訳が有名で、以前ヴェニスの商人を紹介したときに訳者として取り上げました。評論家や劇作家としても多くの著書があります。
「あとがき」から抜粋すると、
話を戻しましょう。これはそんなに難しい本ではありません。下で解説しているように、もともと高校を卒業したくらいの人をメインターゲットにしていた雑誌の連載ですし、そういう人たちに実際に読まれて、現在も文庫本として生き残っているわけです。さすがに古い本なので、言い回しにも考え方にも古臭いところはあり、この本が言っていることを「理解したくない」人には格好の攻撃材料になるかもしれませんが、しかし実際に「難しい本」ではありません。ちょうど1/2a + 1/3a = 5/6aを「理解したがらない」中学生と同じで、わからないのはたいていの場合、難しいからではなく「わかりたくない」からです。本は逃げませんから、そういうときにはさっさと見切りをつけて、いつかわかりたくなったときにまた読んでみればいいだけのことです。
なんだかんだで結局クドクドしてしまいましたが、女性にも男性にも、大人にも読んで欲しい一冊です。
-少し解説-
講談社の「若い女性」は「未婚の社会人女性」を対象とするファッション雑誌で、昭和30年(1965年)の創刊から1982年の休刊まで27年間刊行されました。グーグルで画像検索すると、いつごろのものかはわかりませんが、表紙の写真がいくつか見つかります。ここでいう「未婚の社会人」とは「高校を卒業してから結婚するまで」の期間、具体的には18~23歳くらいを指します。当時の習慣や意識が現在とは異なることに注意してください。昭和30年に18~23歳の人は、昭和7~12年(1932~1937年)生まれです。
念のため数字も示しておきます。内閣府が公開している平成18年版 青少年白書(概要)の第1部 第1章に掲載された第3図によると、昭和30年当時の女性の「平均初婚年齢」は23.8歳でした。女性の進学率は、しっかりと調べたわけではありませんがおよそ、同じ昭和30年の数字で、高校進学率が50%弱、大学進学率が5%くらいだったようです。おそらくですが、当時ファッション雑誌を読んでいたのはかなり先進的な層だったろうと想像でき、典型的には「高校を卒業した都会の社会人女性」が想定されていたのでしょう。
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著者の福田恆存はシェイクスピアの翻訳が有名で、以前ヴェニスの商人を紹介したときに訳者として取り上げました。評論家や劇作家としても多くの著書があります。
「あとがき」から抜粋すると、
この書は「まえがき」の部分を含めすべて昭和三十年から翌三十一年にわたり、講談社の「若い女性」という雑誌に「幸福への手帖」という題のもとに連載したもので、その後三十一年末、新潮社より題も同じく「幸福への手帖」として一冊の単行本にまとめられて出版し、当時二三度版を重ねたまま絶版同様になっていたものの、加筆版(1979年高木書房)のさらに復刻版(1998年筑摩書房)です。内容については、私がクドクド説明するより、巻末にある中野翠さんの「解説」を引用した方が早そうです。
『私の幸福論』というタイトル、説教調と言えなくもない真面目な文体……。人生論の嫌いな私だ。もし私が福田恆存の名前を知らなかったとしたら……この本を手にする気も起きなかったのではないだろうか。(略)私は長い間「教養」という言葉になじめなかった。世間ではどうもこの言葉を「物識り」とか「おけいこごとに熱心な人」とかのニュアンスで使っている様子だったからだ。私は福田恆存によって初めて「教養」という言葉を美しいものとして感じたのだ。私も翻訳家としての福田恆存を先に知り、こんな鮮やかな文章を書く人の評論はどんなものだろう、という興味で読んだ本なので、シェイクスピアの翻訳を先に読んでみるのもよいかもしれません。
話を戻しましょう。これはそんなに難しい本ではありません。下で解説しているように、もともと高校を卒業したくらいの人をメインターゲットにしていた雑誌の連載ですし、そういう人たちに実際に読まれて、現在も文庫本として生き残っているわけです。さすがに古い本なので、言い回しにも考え方にも古臭いところはあり、この本が言っていることを「理解したくない」人には格好の攻撃材料になるかもしれませんが、しかし実際に「難しい本」ではありません。ちょうど1/2a + 1/3a = 5/6aを「理解したがらない」中学生と同じで、わからないのはたいていの場合、難しいからではなく「わかりたくない」からです。本は逃げませんから、そういうときにはさっさと見切りをつけて、いつかわかりたくなったときにまた読んでみればいいだけのことです。
なんだかんだで結局クドクドしてしまいましたが、女性にも男性にも、大人にも読んで欲しい一冊です。
-少し解説-
講談社の「若い女性」は「未婚の社会人女性」を対象とするファッション雑誌で、昭和30年(1965年)の創刊から1982年の休刊まで27年間刊行されました。グーグルで画像検索すると、いつごろのものかはわかりませんが、表紙の写真がいくつか見つかります。ここでいう「未婚の社会人」とは「高校を卒業してから結婚するまで」の期間、具体的には18~23歳くらいを指します。当時の習慣や意識が現在とは異なることに注意してください。昭和30年に18~23歳の人は、昭和7~12年(1932~1937年)生まれです。
念のため数字も示しておきます。内閣府が公開している平成18年版 青少年白書(概要)の第1部 第1章に掲載された第3図によると、昭和30年当時の女性の「平均初婚年齢」は23.8歳でした。女性の進学率は、しっかりと調べたわけではありませんがおよそ、同じ昭和30年の数字で、高校進学率が50%弱、大学進学率が5%くらいだったようです。おそらくですが、当時ファッション雑誌を読んでいたのはかなり先進的な層だったろうと想像でき、典型的には「高校を卒業した都会の社会人女性」が想定されていたのでしょう。
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