進路とデータ1
2021.06.30
学習塾本来の業務ではないのですが、生徒の進路について相談を受けることはよくあります。もちろん、私は学習塾の経営を商売としていて、勉強したい生徒が多ければ多いほど儲かるわけですから、進学希望者が増えて欲しいという願いはどうしてもあります。進路相談の際には必ず最初にそのことをお伝えしますし、この記事の読者にも、しっかり認識して頂きたいと思います。
前置きはそのくらいにして本題に入りましょう。現代は「情報化社会」と言われますから、情報を集める力、集めた情報を使う力はたいへん重要です。この力を鍛えるのにもっとも有効な機会は、進路の検討ではないかと思っています。高校生から進路の相談があったとき、私はいつも「まず自分で情報を集めよう」ということを話します。本当は中学生にもそうして欲しいのですが、少なくとも高校生には、これから「勉強をさせてもらおう」というときに、その成果をどう活用するつもりで、保護者にどれだけの負担が生じそうなのか、たとえ上手くできなくとも説明する努力を経験して欲しい、というのが私の考えです。またもし「本人の意思」を尊重するというなら、意思決定のための情報がなくては話が始まりません。
というところまでが理想論ですが、実際には、必要な情報を集めて、評価して、意思決定して、現実的なプランを考え、保護者の同意を得るところまで自力で頑張れる高校生はほとんどいません。戸惑っている高校生に「本当は高校受験を考えるときに知っておかなければならなかったデータだよ」と示しているのが、大学進学率と学歴別賃金のデータです。
文部科学省が公開している専門高校の現状(専門高校に関する諸データ)を見ると、ここ10年くらいの高校の生徒数として、職業学科が18~20%くらい、普通科とその他専門学科を足して75%ちょっと、平成6年度に新しくできた総合学科が5%ちょっと、という比率になっています。大学進学率は普通科で60%ちょっと、職業学科で20%ちょっとの数字が10年くらい続いています。数字には現れていませんがおそらく、職業学科からの大学進学の多くを推薦入学が占めるでしょう。
進学と就職のどちらがよいかは人によって異なるでしょうが、多くの人が関心を持っているであろう賃金について、厚生労働省が賃金構造基本統計調査というデータを公開しており、令和元年の「学歴別」というデータにはこうあります。
もちろんこれらは、特定の個人の将来を予言するような数字ではありません。あくまで「過去」の「他人」の「平均」に過ぎません。しかし知らないよりは知っていた方がよいでしょうし、簡単に入手できるデータです。データに振り回されるのはバカバカしいことですが、データを活用できないことは明らかな損です。4月21日の記事で「自分の尺度を手放すことも貼り付けることもせず」と書きましたが、こういうバランス感覚は常に必要なものです。データの扱い方も同じで、数字を見ただけで何かがわかったような気になっては間違いの元ですが、調べられる数字は調べておくに越したことがありません。
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前置きはそのくらいにして本題に入りましょう。現代は「情報化社会」と言われますから、情報を集める力、集めた情報を使う力はたいへん重要です。この力を鍛えるのにもっとも有効な機会は、進路の検討ではないかと思っています。高校生から進路の相談があったとき、私はいつも「まず自分で情報を集めよう」ということを話します。本当は中学生にもそうして欲しいのですが、少なくとも高校生には、これから「勉強をさせてもらおう」というときに、その成果をどう活用するつもりで、保護者にどれだけの負担が生じそうなのか、たとえ上手くできなくとも説明する努力を経験して欲しい、というのが私の考えです。またもし「本人の意思」を尊重するというなら、意思決定のための情報がなくては話が始まりません。
というところまでが理想論ですが、実際には、必要な情報を集めて、評価して、意思決定して、現実的なプランを考え、保護者の同意を得るところまで自力で頑張れる高校生はほとんどいません。戸惑っている高校生に「本当は高校受験を考えるときに知っておかなければならなかったデータだよ」と示しているのが、大学進学率と学歴別賃金のデータです。
文部科学省が公開している専門高校の現状(専門高校に関する諸データ)を見ると、ここ10年くらいの高校の生徒数として、職業学科が18~20%くらい、普通科とその他専門学科を足して75%ちょっと、平成6年度に新しくできた総合学科が5%ちょっと、という比率になっています。大学進学率は普通科で60%ちょっと、職業学科で20%ちょっとの数字が10年くらい続いています。数字には現れていませんがおそらく、職業学科からの大学進学の多くを推薦入学が占めるでしょう。
進学と就職のどちらがよいかは人によって異なるでしょうが、多くの人が関心を持っているであろう賃金について、厚生労働省が賃金構造基本統計調査というデータを公開しており、令和元年の「学歴別」というデータにはこうあります。
学歴別に賃金をみると、男性では、大学・大学院卒が400.5千円(前年比0.0%)、高専・短大卒が314.9千円(同0.4%増)、高校卒が292.9千円(同0.4%増)となっています。女性では、大学・大学院卒が296.4千円(同2.2%増)、高専・短大卒が260.6千円(同0.9%増)、高校卒が214.6千円(同0.8%増)です。賃金は地域によっても違い、令和元年の「都道府県別」データによると、全国計307,700円に対して、北海道は280,800円、東京都が379,000円になっています。
もちろんこれらは、特定の個人の将来を予言するような数字ではありません。あくまで「過去」の「他人」の「平均」に過ぎません。しかし知らないよりは知っていた方がよいでしょうし、簡単に入手できるデータです。データに振り回されるのはバカバカしいことですが、データを活用できないことは明らかな損です。4月21日の記事で「自分の尺度を手放すことも貼り付けることもせず」と書きましたが、こういうバランス感覚は常に必要なものです。データの扱い方も同じで、数字を見ただけで何かがわかったような気になっては間違いの元ですが、調べられる数字は調べておくに越したことがありません。
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