ロビンソン・クルーソーとガリバー旅行記
2021.09.27
どちらも、要約版がいわゆる「少年文学」の代表作のようになっていますが、原作はなかなかの曲者です。
ロビンソン漂流記(ISBN 978-4-10-201701-2)
原著が出版されたのは1719年で、大雑把に言えば「大航海時代が終わり産業革命が始まる前」くらい、直前10~20年くらいのヨーロッパの情勢で言うと、イングランドとスコットランドが合同してグレートブリテン王国が成立、スペイン継承戦争と四国同盟戦争でスペインの衰退が加速、ドイツではプロイセン王国が成立した頃です。
もちろん、小学生が要約版の「ロビンソン・クルーソー」を読むときには、こんな情報をいちいち確認する必要はありません。しかし高校で世界史を習って、上記の説明に「あの辺の時代の話か」という見当がつくようになったら、原作を読んでみるのもいい経験になるでしょう。マルケスとフォークナーの紹介で、文学作品から時代や社会を垣間見る読み方について触れましたが、歴史や情勢を知ってから文学作品を読むことにも大きなご利益があります。その後イギリスが「近現代史の極悪人」の側面を見せるようなっていくのを支える、土台のような風潮の一端も窺い知ることができるかもしれません。訳者の吉田健一さんによる「解説」が簡潔かつ明解なので、先に目を通してから読むことをお勧めします。
ガリヴァー旅行記(ISBN 4-00-322093-5)
こちらはさらに曲者です。写真の表紙文句を見ただけでも「いったい何事なのか」といった勢い、中身はもう本当のやりたい放題で、正直私は「下品」だと思いますし、読み物としてそんなに面白いものではないように感じますが、自分が気に入っている本だけを紹介しようとは思いませんし、ロビンソン・クルーソーを紹介したら次はガリバー旅行記、という定番をあえて外すこともないでしょう。
作者のスウィフトはダブリン(アイルランド)育ちのイングランド人で、両国の文学の特徴をドギツいところだけ集めて凝縮したような印象を、私はこの本から受けます。高校生にはお勧めしませんが、興味を持った大人が手に取ってみる分には、ドギツさについてだけは保証のできる本です。
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図書貸出のお知らせ
-参考外部リンク-
The Life and Adventures of Robinson Crusoe (1808) by Daniel Defoe@gutenberg
Gulliver's Travels by Jonathan Swift@gutenberg
Gulliver's Travels into Several Remote Regions of the World by Jonathan Swift@gutenberg (school edition)
ロビンソン漂流記(ISBN 978-4-10-201701-2)
原著が出版されたのは1719年で、大雑把に言えば「大航海時代が終わり産業革命が始まる前」くらい、直前10~20年くらいのヨーロッパの情勢で言うと、イングランドとスコットランドが合同してグレートブリテン王国が成立、スペイン継承戦争と四国同盟戦争でスペインの衰退が加速、ドイツではプロイセン王国が成立した頃です。
もちろん、小学生が要約版の「ロビンソン・クルーソー」を読むときには、こんな情報をいちいち確認する必要はありません。しかし高校で世界史を習って、上記の説明に「あの辺の時代の話か」という見当がつくようになったら、原作を読んでみるのもいい経験になるでしょう。マルケスとフォークナーの紹介で、文学作品から時代や社会を垣間見る読み方について触れましたが、歴史や情勢を知ってから文学作品を読むことにも大きなご利益があります。その後イギリスが「近現代史の極悪人」の側面を見せるようなっていくのを支える、土台のような風潮の一端も窺い知ることができるかもしれません。訳者の吉田健一さんによる「解説」が簡潔かつ明解なので、先に目を通してから読むことをお勧めします。
ガリヴァー旅行記(ISBN 4-00-322093-5)
こちらはさらに曲者です。写真の表紙文句を見ただけでも「いったい何事なのか」といった勢い、中身はもう本当のやりたい放題で、正直私は「下品」だと思いますし、読み物としてそんなに面白いものではないように感じますが、自分が気に入っている本だけを紹介しようとは思いませんし、ロビンソン・クルーソーを紹介したら次はガリバー旅行記、という定番をあえて外すこともないでしょう。
作者のスウィフトはダブリン(アイルランド)育ちのイングランド人で、両国の文学の特徴をドギツいところだけ集めて凝縮したような印象を、私はこの本から受けます。高校生にはお勧めしませんが、興味を持った大人が手に取ってみる分には、ドギツさについてだけは保証のできる本です。
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The Life and Adventures of Robinson Crusoe (1808) by Daniel Defoe@gutenberg
Gulliver's Travels by Jonathan Swift@gutenberg
Gulliver's Travels into Several Remote Regions of the World by Jonathan Swift@gutenberg (school edition)
ナルニア国物語
2021.07.28
左から、ライオンと魔女(ISBN 4-00-114034-9)、カスピアン王子のつのぶえ(ISBN 4-00-114035-7)、朝びらき丸東の海へ(ISBN 4-00-114036-5)、銀のいす(ISBN 4-00-114037-3)、馬と少年(ISBN 4-00-114038-1)、魔術師のおい(ISBN 4-00-114039-X)、さいごの戦い(ISBN 4-00-114040-3)
写真の7冊で「ナルニア国物語」のひとシリーズになっています。
イギリス児童文学の代表作のひとつで、出版社のレーティングで「小学4・5年以上」となっていることからもわかるように、そんなに難しい文章ではありません。著者のルイスはトールキンの友人で、このシリーズもいわゆる「ハイ・ファンタジー」というジャンルに分類されます。指輪物語よりはずっと読みやすく、ホビットの冒険とどっこいくらいでしょう。余談ながら、このシリーズは当初、トールキンに酷評されたそうです。
この本で特徴的なのは、著者が熱心なクリスチャンであったことでしょう。細かいことを言えば、アイルランド国教会から無神論を経てイギリス国教会といった変遷があったりもしますが、重要なのはそこではなく、熱心なクリスチャンが、しかし宗教的な教訓(allegory)とは別物として描いた物語だという点です。そういう経緯があるからこそかえって、彼らが「理屈よりも内側」に持っている感覚が、より素直な形で表現されています。もちろん、ひとことでクリスチャンとはいっても、地域や宗派によって考えや価値観が異なりますが、その一例を体験する材料として、大人が読んでも十分価値がある本でしょう。
自分の国の中だけに引き篭もって暮らすことができない時代、カタカナ語でいえばグローバリゼーションの時代がやってきて、いろいろな文化を持つ人たちと付き合う必要性がどんどん増しています。キリスト教やイスラムについて知る機会の重要性が高まっているのも間違いないでしょう。それに加えて、いつも通りの私の持論ではありますが、やはり私たち自身について知るために、こういった異文化に触れることが重要な助けになります。「井の中の蛙大海を知らず」というのは実際その通りなのでしょうが、もっと大きな問題は「井の中の蛙井を知らず」であって、外から見る視点がなくては内もわからない、ということだと思います。私たち自身にも「理屈よりも内側」に持っている感覚というのは必ずあるのです。
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トールキンの2作
ライラの冒険
写真の7冊で「ナルニア国物語」のひとシリーズになっています。
イギリス児童文学の代表作のひとつで、出版社のレーティングで「小学4・5年以上」となっていることからもわかるように、そんなに難しい文章ではありません。著者のルイスはトールキンの友人で、このシリーズもいわゆる「ハイ・ファンタジー」というジャンルに分類されます。指輪物語よりはずっと読みやすく、ホビットの冒険とどっこいくらいでしょう。余談ながら、このシリーズは当初、トールキンに酷評されたそうです。
この本で特徴的なのは、著者が熱心なクリスチャンであったことでしょう。細かいことを言えば、アイルランド国教会から無神論を経てイギリス国教会といった変遷があったりもしますが、重要なのはそこではなく、熱心なクリスチャンが、しかし宗教的な教訓(allegory)とは別物として描いた物語だという点です。そういう経緯があるからこそかえって、彼らが「理屈よりも内側」に持っている感覚が、より素直な形で表現されています。もちろん、ひとことでクリスチャンとはいっても、地域や宗派によって考えや価値観が異なりますが、その一例を体験する材料として、大人が読んでも十分価値がある本でしょう。
自分の国の中だけに引き篭もって暮らすことができない時代、カタカナ語でいえばグローバリゼーションの時代がやってきて、いろいろな文化を持つ人たちと付き合う必要性がどんどん増しています。キリスト教やイスラムについて知る機会の重要性が高まっているのも間違いないでしょう。それに加えて、いつも通りの私の持論ではありますが、やはり私たち自身について知るために、こういった異文化に触れることが重要な助けになります。「井の中の蛙大海を知らず」というのは実際その通りなのでしょうが、もっと大きな問題は「井の中の蛙井を知らず」であって、外から見る視点がなくては内もわからない、ということだと思います。私たち自身にも「理屈よりも内側」に持っている感覚というのは必ずあるのです。
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トールキンの2作
ライラの冒険
トルコと中東の本
2021.07.11
トルコ 中東情勢のカギをにぎる国(ISBN 978-4-08-781601-3)
放送大学の高橋先生のブログで紹介されていた本から、古本で安かったものを値段だけ見て何冊か買ってみたのですが、その中で面白かったのがこれです。
トルコという国について詳しく解説するというより、トルコを中心とした情勢について理解するための基礎知識をまとめたような印象で、大学院の先生が著者だけあって書き方も親切です。大学の先生だからという言い方は少し乱暴かもしれませんが、一緒に買った海外ジャーナリストが書いた本と比べても、日常的に「人に教えて」いる人の文章はやはり違います。もちろん、体系的な教育を受け学位を取得し、専門家の中で認められ教授職に就いている人の議論には、安定感と説得力があります。高校の世界史と世界地理で習う程度の知識がしっかり身に付いていれば読める内容でしょう。出版が2015年とそんなに新しいわけではありませんが、現在の国際情勢を理解するうえでも間違いなく役立ちます。
国際情勢なんて勉強して何の役に立つの、というのはもっともな疑問です。いろいろな答えがあるでしょうし、役に立たないというのも妥当な答えのひとつではあるでしょうが、私の答えは「見慣れている範囲の外にも世界が広がっていることを知るため」です。突き詰めると、歴史を勉強するのも古典を勉強するのも海外文化を勉強するのも、違う場所なのか違う時代なのか両方違うのかという差はあれど、結局は「目の前以外にも世界が続いている」ことを知るためで、目の前にあるように思っていた物事も「外のこと」を知ってはじめて把握できるようになるのだと思います。高橋先生の授業の中にも、この疑問に対する先生なりの回答が何度か出てきます。それがどんな答えなのか、私が勝手に書いて語弊があっては困りますから、ぜひ自分で授業を視聴してみてください。私の答えとは少し違うようです。
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高橋和夫の3冊
放送大学の高橋先生のブログで紹介されていた本から、古本で安かったものを値段だけ見て何冊か買ってみたのですが、その中で面白かったのがこれです。
トルコという国について詳しく解説するというより、トルコを中心とした情勢について理解するための基礎知識をまとめたような印象で、大学院の先生が著者だけあって書き方も親切です。大学の先生だからという言い方は少し乱暴かもしれませんが、一緒に買った海外ジャーナリストが書いた本と比べても、日常的に「人に教えて」いる人の文章はやはり違います。もちろん、体系的な教育を受け学位を取得し、専門家の中で認められ教授職に就いている人の議論には、安定感と説得力があります。高校の世界史と世界地理で習う程度の知識がしっかり身に付いていれば読める内容でしょう。出版が2015年とそんなに新しいわけではありませんが、現在の国際情勢を理解するうえでも間違いなく役立ちます。
国際情勢なんて勉強して何の役に立つの、というのはもっともな疑問です。いろいろな答えがあるでしょうし、役に立たないというのも妥当な答えのひとつではあるでしょうが、私の答えは「見慣れている範囲の外にも世界が広がっていることを知るため」です。突き詰めると、歴史を勉強するのも古典を勉強するのも海外文化を勉強するのも、違う場所なのか違う時代なのか両方違うのかという差はあれど、結局は「目の前以外にも世界が続いている」ことを知るためで、目の前にあるように思っていた物事も「外のこと」を知ってはじめて把握できるようになるのだと思います。高橋先生の授業の中にも、この疑問に対する先生なりの回答が何度か出てきます。それがどんな答えなのか、私が勝手に書いて語弊があっては困りますから、ぜひ自分で授業を視聴してみてください。私の答えとは少し違うようです。
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高橋和夫の3冊
マルケスとフォークナー
2021.06.25
左から、予告された殺人の記録(ISBN 978-4-10-205211-2)、エレンディラ(ISBN 4-480-02277-5)
南米文学といえばこのマルケス調というくらい流行した、ガルシア=マルケスの中編と短編集です。この著者の作品としては「百年の孤独」の方が有名ですが、何年も前に手放してしまって以来、買い戻す機会に恵まれていません。文庫版がなくやや高価なので、古本屋で見つけても「もう少し安く出ることがあるかも」と、セコい考えに押し切られてしまいます。
フォークナー短編集(ISBN 978-4-10-210203-9)
フォークナーはマルケスよりも30年くらい前の人で、作品を埋め尽くす閉塞感や翻弄感がどこか似ています。思えば、日本にとってもっとも親しい国であるはずなのに、私たちはアメリカの歴史や社会についてあまり大きな関心を払っていません。フォークナーを読めばアメリカがわかる、というのはちょっと短絡的すぎますが、アメリカを知りたい人が前もって読んでおくには格好の作家です。
3冊ともかなり「刺激が強い」本で、残酷な描写も遠慮なく出てきます。私も高校生に勧めようとは思いませんが、年を取りすぎるとこういう異質さに溢れた世界を見る目が鈍くなってくるので、大学生くらいの時期に読むのがちょうどいいのかなと思います。フォークナーは50年、マルケスは82年にノーベル文学賞を受賞した大作家なので、いまさら私が褒めても何の足しにもなりませんが、彼らのように「伝えるべきもの」を持った作家の力強さには、驚嘆しかありません。
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南米文学といえばこのマルケス調というくらい流行した、ガルシア=マルケスの中編と短編集です。この著者の作品としては「百年の孤独」の方が有名ですが、何年も前に手放してしまって以来、買い戻す機会に恵まれていません。文庫版がなくやや高価なので、古本屋で見つけても「もう少し安く出ることがあるかも」と、セコい考えに押し切られてしまいます。
フォークナー短編集(ISBN 978-4-10-210203-9)
フォークナーはマルケスよりも30年くらい前の人で、作品を埋め尽くす閉塞感や翻弄感がどこか似ています。思えば、日本にとってもっとも親しい国であるはずなのに、私たちはアメリカの歴史や社会についてあまり大きな関心を払っていません。フォークナーを読めばアメリカがわかる、というのはちょっと短絡的すぎますが、アメリカを知りたい人が前もって読んでおくには格好の作家です。
3冊ともかなり「刺激が強い」本で、残酷な描写も遠慮なく出てきます。私も高校生に勧めようとは思いませんが、年を取りすぎるとこういう異質さに溢れた世界を見る目が鈍くなってくるので、大学生くらいの時期に読むのがちょうどいいのかなと思います。フォークナーは50年、マルケスは82年にノーベル文学賞を受賞した大作家なので、いまさら私が褒めても何の足しにもなりませんが、彼らのように「伝えるべきもの」を持った作家の力強さには、驚嘆しかありません。
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文章読本
2021.05.01
左から、文章読本(谷崎)(ISBN 4-12-200170-6)、文章読本(三島)(ISBN 978-4-12-206860-5)、文章読本(丸谷)(ISBN 4-12-202466-8)
同じタイトルで著者が異なる本が3冊並んでいますが、このほかにも「文章読本」(ぶんしょうとくほん)と称するものは多数あります。中身はそれぞれ異なり、名前だけでわかるのは「文章について書かれた本」だということだけです。
実物を手に取ってみればわかる話をくどくど引っ張っても仕方ないので、ごく大雑把に言ってしまえば、文章読本というのは「(日本語の)文章はこう読んでこう書くのがよいだろう」というコツや心得や練習法をまとめた本です。3冊とも著名な小説家が書いたもので、文学的な文章を中心に取り上げていますが、文学的でない実用の文章も無視してはいませんし、ある程度は文学的な文章に親しんでいないと実用文章も結局のところ上手には書けません。
この手の本を初めて読む人が親しみやすそうなのは谷崎の文章読本で、解説書というよりは概説書、日本語が持つ特徴や歴史などを紹介しつつ、文章に対する興味と関心を喚起する内容です。手強いのは丸谷の文章読本で、英語や漢文の引用も多く、ページ数も谷崎の本の倍以上あります。高校生に読めないほど難解な本ではありませんが、受験が終わってからゆっくり読んだ方がよいだろうと思います。三島の文章読本は、少し意外ですが、現代の大人が教養書として読むには、3冊の中でいちばん「当たりが軽そう」な内容です。読み物として面白く、教科書で勉強しているような気分にさせないのが長所です。
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同じタイトルで著者が異なる本が3冊並んでいますが、このほかにも「文章読本」(ぶんしょうとくほん)と称するものは多数あります。中身はそれぞれ異なり、名前だけでわかるのは「文章について書かれた本」だということだけです。
実物を手に取ってみればわかる話をくどくど引っ張っても仕方ないので、ごく大雑把に言ってしまえば、文章読本というのは「(日本語の)文章はこう読んでこう書くのがよいだろう」というコツや心得や練習法をまとめた本です。3冊とも著名な小説家が書いたもので、文学的な文章を中心に取り上げていますが、文学的でない実用の文章も無視してはいませんし、ある程度は文学的な文章に親しんでいないと実用文章も結局のところ上手には書けません。
この手の本を初めて読む人が親しみやすそうなのは谷崎の文章読本で、解説書というよりは概説書、日本語が持つ特徴や歴史などを紹介しつつ、文章に対する興味と関心を喚起する内容です。手強いのは丸谷の文章読本で、英語や漢文の引用も多く、ページ数も谷崎の本の倍以上あります。高校生に読めないほど難解な本ではありませんが、受験が終わってからゆっくり読んだ方がよいだろうと思います。三島の文章読本は、少し意外ですが、現代の大人が教養書として読むには、3冊の中でいちばん「当たりが軽そう」な内容です。読み物として面白く、教科書で勉強しているような気分にさせないのが長所です。
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トールキンの2作
2021.04.12
ホビットの冒険(瀬田訳)(ISBN 4-00-114058-6、4-00-114059-4)
いわゆるファンタジー小説の古典ともいうべき、トールキンの「The Hobbit」です。
とても年寄り臭い物言いで自分でも少し切ないのですが、現代の子供たちにもこういう本は読んで欲しい、と願わずにいられません。いつも目にしているのとは違う世界に出会って、自分の尺度を手放すことも貼り付けることもせず、そこに何があるのか探ろうとするのは、大人にとっても簡単なことではありません。しかしこの物語には、そういった努力に応えるだけの力強さがあります。
指輪物語(瀬田・田中訳)(ISBN 4-566-02371-0)(ISBNは9巻セットのもの)
同じトールキンの「The Lord of the Rings」です。ホビットの冒険からは続き物になっている建前ですが、後から入れた修正も多く、私は別物と考えた方がスッキリすると思います。前作から分量も増え、内容も少し複雑になっています。
映画が有名になったのでそちらだけ見た人もいるかもしれません。私も観ましたが、なかなか迫力がある映像でした。本の方はかなり微妙なバランスで、こういうのこそが大好きだという人と退屈だと感じる人に二極化する傾向があるようです。まなびやの蔵書は無料で誰にでも貸し出していますから、それぞれが手に取って自分で確かめればよいだけの話ではありますが、作者が少し頑張りすぎたのかなというのが私の印象です。
-追加-
この記事を公開した後、上記2作の原著合計4冊のセット
The Hobbit and The Lord of the Rings (ISBN 978-0-00-752551-5)
を入手しました。
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ナルニア国物語
いわゆるファンタジー小説の古典ともいうべき、トールキンの「The Hobbit」です。
とても年寄り臭い物言いで自分でも少し切ないのですが、現代の子供たちにもこういう本は読んで欲しい、と願わずにいられません。いつも目にしているのとは違う世界に出会って、自分の尺度を手放すことも貼り付けることもせず、そこに何があるのか探ろうとするのは、大人にとっても簡単なことではありません。しかしこの物語には、そういった努力に応えるだけの力強さがあります。
指輪物語(瀬田・田中訳)(ISBN 4-566-02371-0)(ISBNは9巻セットのもの)
同じトールキンの「The Lord of the Rings」です。ホビットの冒険からは続き物になっている建前ですが、後から入れた修正も多く、私は別物と考えた方がスッキリすると思います。前作から分量も増え、内容も少し複雑になっています。
映画が有名になったのでそちらだけ見た人もいるかもしれません。私も観ましたが、なかなか迫力がある映像でした。本の方はかなり微妙なバランスで、こういうのこそが大好きだという人と退屈だと感じる人に二極化する傾向があるようです。まなびやの蔵書は無料で誰にでも貸し出していますから、それぞれが手に取って自分で確かめればよいだけの話ではありますが、作者が少し頑張りすぎたのかなというのが私の印象です。
-追加-
この記事を公開した後、上記2作の原著合計4冊のセット
The Hobbit and The Lord of the Rings (ISBN 978-0-00-752551-5)
を入手しました。
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ナルニア国物語
初めてのシェイクスピア
2021.03.19
どれから読むのが良い悪いなんてことはありませんが、シェイクスピアを初めて読む人や、以前読んでみて挫折した人に、私がお勧めするのは「ヴェニスの商人」と「十二夜」です。
左から、The Merchant of Venice (ISBN 978-0-19-832867-4)、福田訳(ISBN 978-4-10-202004-3)
ヴェニスの商人は、シェイクスピアがひたすら「上手い」のを楽しめる作品で、福田訳はその「上手さ」を十分に感じ取れる名訳です。話の筋は、他の多くのシェイクスピア作品と同様、大したものではありません。しかしその組み立てが上手い、見せ方が上手い、語り口が上手い、しかも勉強してから読めば勉強した分だけ新しい上手さに気付ける作品です。
上で紹介している英語版はオックスフォード・スクール・シェイクスピアです。シェイクスピアは400年ちょっと前の人なので、作品に使われている英語も少し古いものが混じっていますが、ちょっと古い表現には徹底的に注釈がついており、現代英語の知識だけで読むことができます。語注だけでなく写真や挿絵も豊富で、とくに人物がどういう格好をしていたかや、実際の上演の様子などを知ることができます。こんなに親切な古典の本があるなんて、イギリス人がうらやましい限りです。
初めての読者に勧めるもうひとつの理由は、この作品の欠点にあります。この本の内容は差別的で、しかもそれを問題視するとか改善しようという意図ではなく、悪意に満ちた差別です。まずはここをきちんと認めなくてはなりません。そのうえで、しかしだからといって作品を丸ごと否定すべきものかどうか、考えてみるためのよい機会になるでしょう。
左から、Twelfth Night (ISBN 978-1-58663-851-1)、松岡訳(ISBN 4-480-03306-8)
十二夜は、なんといっても観て読んで面白い作品です。松岡訳の流暢さも申し分ありません。トレヴァー・ナンという監督の映画が素晴らしい出来で、2005年に東北新社が日本語版(EAN 4933364210692)を出したようです。もちろん元の台詞も収録されているので、ぜひ英語音声+日本語字幕で楽しんで欲しい映画です。
英語版はアメリカの出版社のもので、原文と現代英語訳を並べた体裁です。私はあまり便利だとは思わないのですが、似た構成のものが他社からも出ているところを見ると、アメリカではそれなりに人気があるのでしょう。イギリスの出版社がこういうやり方をしているのは見たことがありません。
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シェイクスピア関連の蔵書一覧
-参考外部リンク-
The Merchant of Venice by William Shakespeare@gutenberg
Twelfth Night; Or, What You Will by William Shakespeare@gutenberg
Twelfth Night; or, What You Will by John Philip Kemble and William Shakespeare@gutenberg
左から、The Merchant of Venice (ISBN 978-0-19-832867-4)、福田訳(ISBN 978-4-10-202004-3)
ヴェニスの商人は、シェイクスピアがひたすら「上手い」のを楽しめる作品で、福田訳はその「上手さ」を十分に感じ取れる名訳です。話の筋は、他の多くのシェイクスピア作品と同様、大したものではありません。しかしその組み立てが上手い、見せ方が上手い、語り口が上手い、しかも勉強してから読めば勉強した分だけ新しい上手さに気付ける作品です。
上で紹介している英語版はオックスフォード・スクール・シェイクスピアです。シェイクスピアは400年ちょっと前の人なので、作品に使われている英語も少し古いものが混じっていますが、ちょっと古い表現には徹底的に注釈がついており、現代英語の知識だけで読むことができます。語注だけでなく写真や挿絵も豊富で、とくに人物がどういう格好をしていたかや、実際の上演の様子などを知ることができます。こんなに親切な古典の本があるなんて、イギリス人がうらやましい限りです。
初めての読者に勧めるもうひとつの理由は、この作品の欠点にあります。この本の内容は差別的で、しかもそれを問題視するとか改善しようという意図ではなく、悪意に満ちた差別です。まずはここをきちんと認めなくてはなりません。そのうえで、しかしだからといって作品を丸ごと否定すべきものかどうか、考えてみるためのよい機会になるでしょう。
左から、Twelfth Night (ISBN 978-1-58663-851-1)、松岡訳(ISBN 4-480-03306-8)
十二夜は、なんといっても観て読んで面白い作品です。松岡訳の流暢さも申し分ありません。トレヴァー・ナンという監督の映画が素晴らしい出来で、2005年に東北新社が日本語版(EAN 4933364210692)を出したようです。もちろん元の台詞も収録されているので、ぜひ英語音声+日本語字幕で楽しんで欲しい映画です。
英語版はアメリカの出版社のもので、原文と現代英語訳を並べた体裁です。私はあまり便利だとは思わないのですが、似た構成のものが他社からも出ているところを見ると、アメリカではそれなりに人気があるのでしょう。イギリスの出版社がこういうやり方をしているのは見たことがありません。
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シェイクスピア関連の蔵書一覧
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The Merchant of Venice by William Shakespeare@gutenberg
Twelfth Night; Or, What You Will by William Shakespeare@gutenberg
Twelfth Night; or, What You Will by John Philip Kemble and William Shakespeare@gutenberg
数学をいかに使うか
2021.02.22
数学をいかに使うか(ISBN 978-4-480-09325-7)
とても重いタイトルの本です。
本書の「はじめに」にを読むと
とあり、私も中学生や高校生に数学を教えることがあるので、間違いなく「対象」に入っています。その後は
と続きます。そうです「いかに使うか」ということを考えずに学んでも意味がありません。使える使えないを考慮しないまま教えるなんて、もってのほかです。
ということで、盛り上がった気分で本編を読み進めると、いきなり現実を突き付けられます。難しすぎてまったく理解できません。だましだましで無理に読み進めましたが、第4章の「四元数環の重要性」という見出しを見て心が折れました。正直に言いますがチンプンカンプンです。ようするに私は、数学を勉強し始めるための準備(=この本の内容)を始めるための準備(=著者の言う「線形代数と微積分の初歩」)を始めるための準備(=私が「線形代数と微積分の初歩」だと思っていたもの)を「ちゃんと理解する」ことから始めなければならない、とそういうことです。そんな難しい本を紹介してどうするんだ、と思う人もいるかもしれませんが、たまには現実に打たれて虚心になることも必要です。その機会を得られただけで、内容は理解できなくても、この本を手に取った甲斐は十分にあるでしょう。
これだけで記事を終わらせるのもちょっと心苦しいので、最後に数学の知識がなくてもなんとなく言っていることはわかるくだりを引用しておきます。
なお、まなびやは「生徒が身に付けたいこと」優先の学習塾なので、要望があれば鶴亀算でも旅人算でも教えます。
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とても重いタイトルの本です。
本書の「はじめに」にを読むと
本書では線形代数と微積分の初歩を学んだ人を主な対象とする(略)大学の理工系に進んだ人、経済学で数学を使う人、中学、高校などで数学を教えている人(略)今学びつつある人ももちろん入る。(省略は阿部による、以下同様)
とあり、私も中学生や高校生に数学を教えることがあるので、間違いなく「対象」に入っています。その後は
「使えない数学は教えなくてよく、学ばなくてもよい」
と続きます。そうです「いかに使うか」ということを考えずに学んでも意味がありません。使える使えないを考慮しないまま教えるなんて、もってのほかです。
ということで、盛り上がった気分で本編を読み進めると、いきなり現実を突き付けられます。難しすぎてまったく理解できません。だましだましで無理に読み進めましたが、第4章の「四元数環の重要性」という見出しを見て心が折れました。正直に言いますがチンプンカンプンです。ようするに私は、数学を勉強し始めるための準備(=この本の内容)を始めるための準備(=著者の言う「線形代数と微積分の初歩」)を始めるための準備(=私が「線形代数と微積分の初歩」だと思っていたもの)を「ちゃんと理解する」ことから始めなければならない、とそういうことです。そんな難しい本を紹介してどうするんだ、と思う人もいるかもしれませんが、たまには現実に打たれて虚心になることも必要です。その機会を得られただけで、内容は理解できなくても、この本を手に取った甲斐は十分にあるでしょう。
これだけで記事を終わらせるのもちょっと心苦しいので、最後に数学の知識がなくてもなんとなく言っていることはわかるくだりを引用しておきます。
旧制高校の数学の教科書には(略)次の三次または四次方程式を解けというのが少なくとも十五題以上あったと思う。私はひとつも解いたおぼえはない。(略)何でも昔から教えて来たことを無批判に教えるのは愚劣であるが、鶴亀算や旅人算を教えたように、「それを教えることになっている」と中々やめられなかったし、今でもやめられないのである。
なお、まなびやは「生徒が身に付けたいこと」優先の学習塾なので、要望があれば鶴亀算でも旅人算でも教えます。
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シェイクスピア関連の蔵書一覧
2021.01.31
個々の作品にはおいおい触れていくとして、先に蔵書の一覧を掲載しておきます。
上の段、左から順に、
シェイクスピアハンドブック(福田恆存 監修)(ISBN 4-385-35275-5)
シェイクスピアの悲劇(上下巻)(中西訳)(ISBN不明、現行本は9784003226315と9784003226322)
エリザベス朝の世界像(磯田ら訳)(ISBN 4-480-01367-9)
深読みシェイクスピア(ISBN 978-4-10-120471-0)
Shakespeare's Sonnets (ISBN 9781985801813)
Romeo and Juliet (Dover Thrift Editions)(ISBN 978-0-486-27557-4)
ロミオとジュリエット(中野訳)(ISBN 978-4-10-202001-2)
Othello (Wordsworth Classics)(ISBN 978-1-85326-018-6)
オセロー(福田訳)(ISBN 978-4-10-202002-9)
Hamlet (Cambridge School Shakespeare、Third edition)(ISBN 978-1-107-61548-9)
Hamlet (Oxford School Shakespeare、2007年改訂本)(ISBN 978-019-839906-3)
Hamlet, Prince of Denmark (The new cambridge shakespeare、Third edition)(ISBN 978-1-316-60673-5)
Hamlet (The Oxford Shakespeare、2008年復刊本、1987初版)(ISBN 978-0-19-953581-1)
ハムレット(福田訳)(ISBN 978-4-10-202003-6)
ハムレット(松岡訳)(ISBN 4-480-03301-7)
ハムレット(小田島訳)(ISBN 4-560-07023-7)
新訳 ハムレット(河合訳)(ISBN 978-4-04-210614-2)
ハムレットQ1(安西訳)(ISBN 978-4-334-75201-9)
下の段、左から順に、
The Merchant of Venice (Oxford School Shakespeare、2010年改訂本)(ISBN 978-0-19-832867-4)
ヴェニスの商人(福田訳)(ISBN 978-4-10-202004-3)
King Lear(原文現代英語対照版)(ISBN 978-0-8120-3637-4)
リア王(福田訳)(ISBN 978-4-10-202005-0)
ジュリアスシーザー(福田訳)(ISBN 978-4-10-202006-7)
マクベス(福田訳)(ISBN 978-4-10-202007-4)
夏の夜の夢・あらし(福田訳)(ISBN 978-4-10-202008-1)
テンペスト(松岡訳)(ISBN 4-480-03308-4)
A Midsummer Night's Dream (Wordsworth Classics)(ISBN 978-1-85326-030-8)
じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ(福田訳)(ISBN 978-4-10-202009-8)
アントニーとクレオパトラ(福田訳)(ISBN 978-4-10-202010-4)
リチャード三世(福田訳)(ISBN 978-4-10-202011-1)
お気に召すまま(福田訳)(ISBN 978-4-10-202012-8)
Twelfth Night(原文現代英語対照版)(ISBN 978-1-58663-851-1)
十二夜(松岡訳)(ISBN 4-480-03306-8)
十二夜(小津訳)(ISBN 4-00-322048-X)
コリオレイナス(松岡訳)(ISBN 978-4-480-03314-7)
恋の骨折り損(松岡訳)(ISBN 978-4-480-03316-1)
The Winter's Tale (Collins Classics)(ISBN 978-0-00-792548-3)
冬物語(松岡訳)(ISBN 978-4-480-03318-5)
間違いの喜劇(小田島訳)(ISBN 4-560-07005-9)
タイタス・アンドロニカス(小田島訳)(ISBN 4-560-07006-7)
トロイラスとクレシダ(小田島訳)(ISBN 978-4-560-07024-6)
ヘンリー八世(小田島訳)(ISBN 4-560-07037-7)
入れ替わった本が増えたら随時更新します。
-関連記事-
図書貸出のお知らせ
ヨーロッパとイギリスの略年表
-参考外部リンク-
Books by Shakespeare, William@gutenberg
Books by Shakespeare (spurious and doubtful works)@gutenberg
Royal Shakespeare Company
上の段、左から順に、
シェイクスピアハンドブック(福田恆存 監修)(ISBN 4-385-35275-5)
シェイクスピアの悲劇(上下巻)(中西訳)(ISBN不明、現行本は9784003226315と9784003226322)
エリザベス朝の世界像(磯田ら訳)(ISBN 4-480-01367-9)
深読みシェイクスピア(ISBN 978-4-10-120471-0)
Shakespeare's Sonnets (ISBN 9781985801813)
Romeo and Juliet (Dover Thrift Editions)(ISBN 978-0-486-27557-4)
ロミオとジュリエット(中野訳)(ISBN 978-4-10-202001-2)
Othello (Wordsworth Classics)(ISBN 978-1-85326-018-6)
オセロー(福田訳)(ISBN 978-4-10-202002-9)
Hamlet (Cambridge School Shakespeare、Third edition)(ISBN 978-1-107-61548-9)
Hamlet (Oxford School Shakespeare、2007年改訂本)(ISBN 978-019-839906-3)
Hamlet, Prince of Denmark (The new cambridge shakespeare、Third edition)(ISBN 978-1-316-60673-5)
Hamlet (The Oxford Shakespeare、2008年復刊本、1987初版)(ISBN 978-0-19-953581-1)
ハムレット(福田訳)(ISBN 978-4-10-202003-6)
ハムレット(松岡訳)(ISBN 4-480-03301-7)
ハムレット(小田島訳)(ISBN 4-560-07023-7)
新訳 ハムレット(河合訳)(ISBN 978-4-04-210614-2)
ハムレットQ1(安西訳)(ISBN 978-4-334-75201-9)
下の段、左から順に、
The Merchant of Venice (Oxford School Shakespeare、2010年改訂本)(ISBN 978-0-19-832867-4)
ヴェニスの商人(福田訳)(ISBN 978-4-10-202004-3)
King Lear(原文現代英語対照版)(ISBN 978-0-8120-3637-4)
リア王(福田訳)(ISBN 978-4-10-202005-0)
ジュリアスシーザー(福田訳)(ISBN 978-4-10-202006-7)
マクベス(福田訳)(ISBN 978-4-10-202007-4)
夏の夜の夢・あらし(福田訳)(ISBN 978-4-10-202008-1)
テンペスト(松岡訳)(ISBN 4-480-03308-4)
A Midsummer Night's Dream (Wordsworth Classics)(ISBN 978-1-85326-030-8)
じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ(福田訳)(ISBN 978-4-10-202009-8)
アントニーとクレオパトラ(福田訳)(ISBN 978-4-10-202010-4)
リチャード三世(福田訳)(ISBN 978-4-10-202011-1)
お気に召すまま(福田訳)(ISBN 978-4-10-202012-8)
Twelfth Night(原文現代英語対照版)(ISBN 978-1-58663-851-1)
十二夜(松岡訳)(ISBN 4-480-03306-8)
十二夜(小津訳)(ISBN 4-00-322048-X)
コリオレイナス(松岡訳)(ISBN 978-4-480-03314-7)
恋の骨折り損(松岡訳)(ISBN 978-4-480-03316-1)
The Winter's Tale (Collins Classics)(ISBN 978-0-00-792548-3)
冬物語(松岡訳)(ISBN 978-4-480-03318-5)
間違いの喜劇(小田島訳)(ISBN 4-560-07005-9)
タイタス・アンドロニカス(小田島訳)(ISBN 4-560-07006-7)
トロイラスとクレシダ(小田島訳)(ISBN 978-4-560-07024-6)
ヘンリー八世(小田島訳)(ISBN 4-560-07037-7)
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Royal Shakespeare Company
歴史の本
2021.01.25
歴史の本は「当たり外れ」が大きい傾向がありますが、まなびやの蔵書のなかでもとくにお薦めできる3冊を紹介します。
ビスマルク(ISBN 978-4-12-102304-9)
どうしてこの本から紹介を始めるのか、という理由がまず大切です。歴史というのは、古過ぎても物証が乏しくなりますが、一般には「近く新しい」ほど扱いが困難になります。遠いドイツの人物でなく日本の人物だったなら、あるいは、19世紀のうちに亡くなった人物でなく21世紀まで存命した人物だったなら、この本にあるような冷静な観察や客観的な議論が、より困難になったことでしょう。しかし遠すぎたり古すぎたりしても、今度は現在の私たちとの関わりを見出すのが大変になります。そういったバランスの中で、ビスマルクは実にちょうどよいところに立っています。
学校で何をどう習うか、職業として何を専門にするかとは別の話として、歴史の勉強はすべての人が何かしらやってみるべきもので、この本はその取っ掛かりにうってつけです。高校生がスラスラ読めるほど簡単な内容ではありませんが「読んでみたけれどわからなかった」という経験だけでも貴重なものです。もちろん、大人の教養書としてもお薦めできます。
フランス現代史(ISBN 978-4-00-431751-7)
今度は「人物」ではなく「国」に着目するタイプの本です。扱う時代が「現代」を含むこともあって、ここで紹介する3冊の中ではやや難しめの本ですが、日本から見たフランスという国の近さと遠さが、やはりちょうどよくつりあっています。上のビスマルクを読んでみて、歴史も面白いなと思った人に、ぜひお薦めします。
イギリス史10講(ISBN 978-4-00-431464-6)
最後はひとつの国に注目して古代から現代までを駆け抜けるタイプの本です。正直なところ、読み物として読むには取っ付きにくいところがありますが、イギリスに関する知識を仕入れるための実用書としてはたいへん便利です。通史とはいっても、全10講で300ページくらいあるうち、4~8講の150ページちょっとを16~19世紀に費やしており、イギリスの時代劇なんかを観たり読んだりするときに、理解を助けてくれます。また英文科への進学が決まった生徒は、入学までの間に大急ぎで読んでおくべき本です。
ここで紹介した本はどれもしっかりした内容のものですが、最初に触れたように、歴史というのは近ければ近いほど新しければ新しいほど微妙で繊細な問題になり、ちゃんと勉強しようと思ったら専門の先生に教わるのが一番です。大学の歴史学科で教わるレベルの授業はともかく、教養科目なり自由科目なりといった名目の講義には、親しみやすいものもきっとあるでしょう。そういう授業を受ける機会は、短大や大学に進学するメリットのひとつですが、以前紹介した放送大学の放送やテキストを活用すれば、自宅で勉強することもできます。
-関連記事-
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放送大学の授業と印刷教材
ビスマルク(ISBN 978-4-12-102304-9)
どうしてこの本から紹介を始めるのか、という理由がまず大切です。歴史というのは、古過ぎても物証が乏しくなりますが、一般には「近く新しい」ほど扱いが困難になります。遠いドイツの人物でなく日本の人物だったなら、あるいは、19世紀のうちに亡くなった人物でなく21世紀まで存命した人物だったなら、この本にあるような冷静な観察や客観的な議論が、より困難になったことでしょう。しかし遠すぎたり古すぎたりしても、今度は現在の私たちとの関わりを見出すのが大変になります。そういったバランスの中で、ビスマルクは実にちょうどよいところに立っています。
学校で何をどう習うか、職業として何を専門にするかとは別の話として、歴史の勉強はすべての人が何かしらやってみるべきもので、この本はその取っ掛かりにうってつけです。高校生がスラスラ読めるほど簡単な内容ではありませんが「読んでみたけれどわからなかった」という経験だけでも貴重なものです。もちろん、大人の教養書としてもお薦めできます。
フランス現代史(ISBN 978-4-00-431751-7)
今度は「人物」ではなく「国」に着目するタイプの本です。扱う時代が「現代」を含むこともあって、ここで紹介する3冊の中ではやや難しめの本ですが、日本から見たフランスという国の近さと遠さが、やはりちょうどよくつりあっています。上のビスマルクを読んでみて、歴史も面白いなと思った人に、ぜひお薦めします。
イギリス史10講(ISBN 978-4-00-431464-6)
最後はひとつの国に注目して古代から現代までを駆け抜けるタイプの本です。正直なところ、読み物として読むには取っ付きにくいところがありますが、イギリスに関する知識を仕入れるための実用書としてはたいへん便利です。通史とはいっても、全10講で300ページくらいあるうち、4~8講の150ページちょっとを16~19世紀に費やしており、イギリスの時代劇なんかを観たり読んだりするときに、理解を助けてくれます。また英文科への進学が決まった生徒は、入学までの間に大急ぎで読んでおくべき本です。
ここで紹介した本はどれもしっかりした内容のものですが、最初に触れたように、歴史というのは近ければ近いほど新しければ新しいほど微妙で繊細な問題になり、ちゃんと勉強しようと思ったら専門の先生に教わるのが一番です。大学の歴史学科で教わるレベルの授業はともかく、教養科目なり自由科目なりといった名目の講義には、親しみやすいものもきっとあるでしょう。そういう授業を受ける機会は、短大や大学に進学するメリットのひとつですが、以前紹介した放送大学の放送やテキストを活用すれば、自宅で勉強することもできます。
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