学校を選ぶ手がかり
2022.01.14
いつも教室で言っていることですが、社会の情報化が進めば進むほど、有害な情報や有用でない情報の「比率」は上がっていきます。しかしその一方で、有用な情報の量と質も、着実に向上しています。乱暴に言えば「探しさえすれば情報はちゃんとある」時代にかなり近付いたということです。
前置きはこのくらいにして、とくに高校生が進学先を選ぶときに、役に立つかもしれないアイディアを紹介します。正式な名称ではありませんが、ネットで「優秀卒論」というキーワードを検索してみてください。かなりの数がヒットすると思います。具体的な志望校候補があるなら「大学名 卒論」などと検索してみてもよいでしょう。
論文なんて読んでも、学問的な内容は理解できないかもしれませんが、目的はそこではありません。わざわざ公開されている「優秀」卒論というのは、卒業までにこういうことができるようになって欲しい、また実際にできるようになった生徒がいる、という学校からのメッセージだと理解できます。
一昔前は、入試問題こそが「どんな生徒に来て欲しいのか」という学校のメッセージでした。卒論の公開が広まったおかげで、新しい判断材料が増えたのだといえます。ぜひ、活用してみてください。選抜に論文や作文が必要な場合にも、参考情報として役立つでしょう。
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進路とデータ
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論文なんて読んでも、学問的な内容は理解できないかもしれませんが、目的はそこではありません。わざわざ公開されている「優秀」卒論というのは、卒業までにこういうことができるようになって欲しい、また実際にできるようになった生徒がいる、という学校からのメッセージだと理解できます。
一昔前は、入試問題こそが「どんな生徒に来て欲しいのか」という学校のメッセージでした。卒論の公開が広まったおかげで、新しい判断材料が増えたのだといえます。ぜひ、活用してみてください。選抜に論文や作文が必要な場合にも、参考情報として役立つでしょう。
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進路とデータ
かなの成り立ち事典
2022.01.14
ピーターラビット シリーズ
2022.01.05
The Tale of Peter Rabbit (ISBN 978-0-7232-4770-8)
日本で「ピーターラビットのおはなし」として親しまれている本の原著です。いろいろな版が出版されており、まなびやの蔵書にあるのはFrederick Warneのカラー刷りハードカバーです。写真では大きさがわかりませんが、本来の「子供用サイズ」で、閉じた状態で縦14.5cmの横11cmくらいでした。内容はもちろん小さい子供向けですが、英語で読まないと楽しめない要素が多く含まれるので、中学生くらいになってから挑戦するのがいいかなと思います。文学研究の対象としても面白いシリーズで、探してみたところ三重大学の学生さんが卒論のテーマとして取り上げていました。
The Tale of Squirrel Nutkin (ISBN 9798546348298)
こちらは2作目の「リスのナトキンのおはなし」の原著です。中身は普通なのですが、縦23cm横15cm(正確には9×6インチ)のアメリカ式ペーパーバックで、中の挿絵は粗い画質のモノクロ印刷です。出版元の表記がなく、ISBNも変で、問い合わせ先が日本のAmazonになっているので、著作権が切れた作品をただコピーして綴じただけの本なのかもしれません。知名度ではピーターラビットに敵いませんが、私はこの話の方が好きです。
著者のビアトリクス・ポターに関する研究もさかんで、マーガレット・レインの「The Magic Years of Beatrix Potter」(猪熊訳「ビアトリクス・ポターの生涯」ISBN 978-4834001280)やジュディ・テイラーの「Beatrix Potter: Artist, Storyteller, and Countrywoman」(吉田訳「ビアトリクス・ポター」ISBN 978-4834025316)といった評伝が出版されているほか、The Beatrix Potter Society(ビアトリクス・ポター協会)という学術団体まで作られました。日本では埼玉県こども動物自然公園内に大東文化大学の資料館があります。
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図書貸出のお知らせ
-参考外部リンク-
ピーターラビット公式サイト
The Beatrix Potter Society
Books: Beatrix Potter (sorted by popularity)@gutenberg
Great Big Treasury of Beatrix Potter by Beatrix Potter@gutenberg
ビアトリクス・ポター資料館@大東文化大学
日本で「ピーターラビットのおはなし」として親しまれている本の原著です。いろいろな版が出版されており、まなびやの蔵書にあるのはFrederick Warneのカラー刷りハードカバーです。写真では大きさがわかりませんが、本来の「子供用サイズ」で、閉じた状態で縦14.5cmの横11cmくらいでした。内容はもちろん小さい子供向けですが、英語で読まないと楽しめない要素が多く含まれるので、中学生くらいになってから挑戦するのがいいかなと思います。文学研究の対象としても面白いシリーズで、探してみたところ三重大学の学生さんが卒論のテーマとして取り上げていました。
The Tale of Squirrel Nutkin (ISBN 9798546348298)
こちらは2作目の「リスのナトキンのおはなし」の原著です。中身は普通なのですが、縦23cm横15cm(正確には9×6インチ)のアメリカ式ペーパーバックで、中の挿絵は粗い画質のモノクロ印刷です。出版元の表記がなく、ISBNも変で、問い合わせ先が日本のAmazonになっているので、著作権が切れた作品をただコピーして綴じただけの本なのかもしれません。知名度ではピーターラビットに敵いませんが、私はこの話の方が好きです。
著者のビアトリクス・ポターに関する研究もさかんで、マーガレット・レインの「The Magic Years of Beatrix Potter」(猪熊訳「ビアトリクス・ポターの生涯」ISBN 978-4834001280)やジュディ・テイラーの「Beatrix Potter: Artist, Storyteller, and Countrywoman」(吉田訳「ビアトリクス・ポター」ISBN 978-4834025316)といった評伝が出版されているほか、The Beatrix Potter Society(ビアトリクス・ポター協会)という学術団体まで作られました。日本では埼玉県こども動物自然公園内に大東文化大学の資料館があります。
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ピーターラビット公式サイト
The Beatrix Potter Society
Books: Beatrix Potter (sorted by popularity)@gutenberg
Great Big Treasury of Beatrix Potter by Beatrix Potter@gutenberg
ビアトリクス・ポター資料館@大東文化大学
分極と交流
2021.12.22
とくに高校生相手の相談で、進路を決めるということは、何年かの間「住む場所」を決めることでもある、ということをよく話します。もちろん、習得したい技能だとか必要になる費用だとか、他にもっと重要な事柄があるのは間違いありませんが、住む場所によって得られる経験というのも見過ごせない要素でしょう。
私個人としては、田舎の人には都会の暮らしを、都会の人には田舎の暮らしを体験してみて欲しいという願いがありますが、もっと大切なことはそれを「選ぶ」意識だと思っています。ずっと同じ場所で暮らすのだとしても、世の中に「ここ」とは違う場所があるらしいことを知ったうえで、自分で材料を得て選んだ結果であれば、そうでない場合とはおのずと違いが生まれてくるだろうという確信があります。
情報の伝達はどんどん速く容易になっていますが、一方でいろいろな分極が進んでいます。都会と田舎、若者と老人、金持ちと貧乏人、男性と女性、日本人と外国人、他にもまだまだあるでしょう。格差とか分断といった否定的な言葉が使われることもありますが、世の中が多様になれば、小さいグループで固まりたい心情が強くなるのは自然なことです。そういう傾向が進めば進むほど、高くなってしまった「隔たり」を越えなければならない機会も増えます。自分自身も「選んだ結果」として今ここにいるのだ、という認識がもしあれば、大きな助けになるに違いありません。
私個人としては、田舎の人には都会の暮らしを、都会の人には田舎の暮らしを体験してみて欲しいという願いがありますが、もっと大切なことはそれを「選ぶ」意識だと思っています。ずっと同じ場所で暮らすのだとしても、世の中に「ここ」とは違う場所があるらしいことを知ったうえで、自分で材料を得て選んだ結果であれば、そうでない場合とはおのずと違いが生まれてくるだろうという確信があります。
情報の伝達はどんどん速く容易になっていますが、一方でいろいろな分極が進んでいます。都会と田舎、若者と老人、金持ちと貧乏人、男性と女性、日本人と外国人、他にもまだまだあるでしょう。格差とか分断といった否定的な言葉が使われることもありますが、世の中が多様になれば、小さいグループで固まりたい心情が強くなるのは自然なことです。そういう傾向が進めば進むほど、高くなってしまった「隔たり」を越えなければならない機会も増えます。自分自身も「選んだ結果」として今ここにいるのだ、という認識がもしあれば、大きな助けになるに違いありません。
ハムレット
2021.12.14
左上、右上、左下、右下の順に、Hamlet (The Oxford Shakespeare、2008年復刊本、1987初版)(ISBN 978-0-19-953581-1)、Hamlet (Oxford School Shakespeare、2007年改訂本)(ISBN 978-019-839906-3)、Hamlet (Cambridge School Shakespeare、Third edition)(ISBN 978-1-107-61548-9)、Hamlet, Prince of Denmark (The new cambridge shakespeare、Third edition)(ISBN 978-1-316-60673-5)
左から、ハムレット(福田訳)(ISBN 978-4-10-202003-6)、ハムレット(松岡訳)(ISBN 4-480-03301-7)、ハムレット(小田島訳)(ISBN 4-560-07023-7)、新訳 ハムレット(河合訳)(ISBN 978-4-04-210614-2)、ハムレットQ1(安西訳)(ISBN 978-4-334-75201-9)
シェイクスピアの紹介を始めたからには、触れないで済ませるわけにはいかない作品ですが、中身を解説するのは恐れ多いので、中身でないところについて書きます。中身の解説もしないのに写真の本の多さはいったい何なのか、という疑問はもっともですが、この「豊富さ」もハムレットの重要な特徴のひとつです。
イギリスにはオックスフォードとケンブリッジという名門大学があり、互いに対抗意識が強く、ことあるごとに張り合っていることで知られていますが、日本と違い出版分野でも両大学の出版局が大きな役割を果たしています。いっぽう、シェイクスピアというのはイギリスで一番有名な作家で、ハムレットはその一番有名な作品ですから、文学分野の出版物としてはもっとも大きな注目を集める看板商品になります。すると当然、オックスフォード大学出版局やケンブリッジ大学出版局が発行する「ハムレット」には、それぞれの英知と情熱と研究成果が惜しみなく注がれることになります。
ただし、オックスフォード版や新ケンブリッジ版のハムレットを読むのは、英文科の大学生にとっても簡単なことではありません。上演のための本であることを優先している新ケンブリッジ版に対して、オックスフォード版は文学研究を優先した構成で、読み進めるのはさらに大変です。最所先生の本を紹介した記事で「すぐには理解できなくても最高のものに触れてみよう」という話をしましたが、最初がこの2冊ではさすがに手ごわすぎるので、十二夜の紹介記事で触れたオックスフォード・スクール・シェイクスピアか、解説と本文が見開きで並んだケンブリッジ・スクール・シェイクスピアの方が無難です。
こちらがそのスクール・シェイクスピアの中身です。
左のオックスフォード版は徹底的な語注と視覚的なイメージを補うイラストが特徴です。単なる中高生向けバージョンを超えて、当時のビジュアルの資料として一級品のものが掲載されています。ケンブリッジ版は写真も含めカラー印刷されており、上演を強く意識した作りです。読者にテーマを与えて考えさせる(または話し合わせる)コーナーも豊富ですが、それでいて「勉強っぽい」感じになっていないのが巧妙です。どちらの本も、ひとつのジャンルの中で競い合いながら独自の方向性を持っていて、どちらも負けることなくそれぞれの主張を充実させ続けているのは、本当にお見事です。
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シェイクスピア関連の蔵書一覧
-参考外部リンク-
オックスフォード大学出版局
ケンブリッジ大学出版局
左から、ハムレット(福田訳)(ISBN 978-4-10-202003-6)、ハムレット(松岡訳)(ISBN 4-480-03301-7)、ハムレット(小田島訳)(ISBN 4-560-07023-7)、新訳 ハムレット(河合訳)(ISBN 978-4-04-210614-2)、ハムレットQ1(安西訳)(ISBN 978-4-334-75201-9)
シェイクスピアの紹介を始めたからには、触れないで済ませるわけにはいかない作品ですが、中身を解説するのは恐れ多いので、中身でないところについて書きます。中身の解説もしないのに写真の本の多さはいったい何なのか、という疑問はもっともですが、この「豊富さ」もハムレットの重要な特徴のひとつです。
イギリスにはオックスフォードとケンブリッジという名門大学があり、互いに対抗意識が強く、ことあるごとに張り合っていることで知られていますが、日本と違い出版分野でも両大学の出版局が大きな役割を果たしています。いっぽう、シェイクスピアというのはイギリスで一番有名な作家で、ハムレットはその一番有名な作品ですから、文学分野の出版物としてはもっとも大きな注目を集める看板商品になります。すると当然、オックスフォード大学出版局やケンブリッジ大学出版局が発行する「ハムレット」には、それぞれの英知と情熱と研究成果が惜しみなく注がれることになります。
ただし、オックスフォード版や新ケンブリッジ版のハムレットを読むのは、英文科の大学生にとっても簡単なことではありません。上演のための本であることを優先している新ケンブリッジ版に対して、オックスフォード版は文学研究を優先した構成で、読み進めるのはさらに大変です。最所先生の本を紹介した記事で「すぐには理解できなくても最高のものに触れてみよう」という話をしましたが、最初がこの2冊ではさすがに手ごわすぎるので、十二夜の紹介記事で触れたオックスフォード・スクール・シェイクスピアか、解説と本文が見開きで並んだケンブリッジ・スクール・シェイクスピアの方が無難です。
こちらがそのスクール・シェイクスピアの中身です。
左のオックスフォード版は徹底的な語注と視覚的なイメージを補うイラストが特徴です。単なる中高生向けバージョンを超えて、当時のビジュアルの資料として一級品のものが掲載されています。ケンブリッジ版は写真も含めカラー印刷されており、上演を強く意識した作りです。読者にテーマを与えて考えさせる(または話し合わせる)コーナーも豊富ですが、それでいて「勉強っぽい」感じになっていないのが巧妙です。どちらの本も、ひとつのジャンルの中で競い合いながら独自の方向性を持っていて、どちらも負けることなくそれぞれの主張を充実させ続けているのは、本当にお見事です。
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オックスフォード大学出版局
ケンブリッジ大学出版局